Opinion

II. 鎌倉ライブデモンストレーションが目指すもの −
私の考え(あくまでも自分勝手な私見)

(1) 鎌倉ライブデモンストレーションは世界を視野に置く
 僕はつい数日前に中国の(一年間毎の更新が必要ではあるが)正式の医師免許証を取得しました。中国に最初に行ったのは1991年12月のことでした。それまでは実際問題として外国人と接する機会もほとんど無く、従って英語を実際の場で話す機会もありませんでした。一人きりで日本から北京に入り、今でも優れた友人であるProfessor Gao RunLin, Professor Hu DaYiと知り合い、彼らの見守る中でPTCAを行いました。英語と中国語ばかりの日本に逃げ出したい環境、そしてこの時に受けた強烈なカルチャー・ショックが僕の目を初めて外国に開かせてくれました。そして、それと共に自分の日本人としてのアイデンティティーを意識するようになりました。自分が日本人であると意識するようになると共に日本が過去に犯してきた罪についても意識するようになりました。正直のところ、君が代も日章旗もものすごく愛するようになりました。その一方で過去の戦争犯罪についても何かせねばならない、と思うようになりました。
 医師として何をすべきか?と、考えた時、私に出来ることは精一杯の努力をしてその国に自分として出来る医療での貢献を行いつづけること、そして僕が至った日本人としての自覚を少しでも多くの日本人に医療を通じて伝導することだと思いました。
 鎌倉ライブデモンストレーションについてもこの思想が当然反映されるべきであり、その具体像の一つが英語という共通語による外国人との意思の共有であります。また、鎌倉ライブデモンストレーション実行委員の皆様方が、この思想に共鳴されていると信じます。そして、多くの日本人に対して日本は世界の中の日本である、ということを訴えて行きたいと思います。

(2) アジアとの連携の維持
 従来どおりアジア特に中国との密接な連携を維持していきたいと思います。このため、ある程度アジア地域からのFacultyが増加することはやむを得ないと思います。

(3) 軸足はあくまでも神奈川県にある
 「何故鎌倉なのか」それは「鎌倉が神奈川県にある」からです。神奈川県の先生方は今まで上記(1),(2)に関して非常に積極的でありました。歴史的にもいち早く開港した横浜港を有するなどもともと神奈川県は長崎県と同じく世界に開かれていました。僕が自分のアイデンティティーを日本という国に求めるのと同じく、鎌倉ライブデモンストレーションのアイデンティティーは神奈川県に求めることが出来ます。
 (4) 鎌倉ライブデモンストレーションではあまり実態とかけ離れた医療を行わない
各地のミニ・ライブデモンストレーションに術者として呼ばれた時に、他のモ日本を代表するモ術者の手技を見る機会が多くあります。そういう時に、5時間もかけて500ml以上の造影剤を用いて慢性完全閉塞に対して果敢に立ち向かい、結局はうまくいかない、といった症例を目の当たりにしました。あるいは80才以上の左主幹部に対して際立った時間をかけてDCAを試み、結局は削れずにステントを置いた、という症例も見ました。そして、その手技の最中は冗談さながらのモ議論モをしているのです。僕はこのような患者不在のライブデモンストレーションは決してしたくはありません。医療の現実の世界ではあってはならないことです。
勿論、これは挑戦的な手技をライブデモンストレーションにおいては公開しない、ということではありませんし、いかなる政治的な動きとも関連していません。

(5) 訴えるテーマはTRIで良い
 小倉・倉敷のライブデモンストレーションは「日頃の自分の施設でのPTCAを見せる」というテーマで行われ、CCTは「通常の世界とかけ離れた挑戦的な症例に対する手技を見せる」というテーマで行われていると理解します。これらは何れも重要な概念であります。しかし、鎌倉ライブデモンストレーションはそうではなく「TRIの普及」ということをテーマに掲げたいと思います。ただ、その普及のためにいかなるプログラムで行うか、が重要だと思います。これは村松先生が行われているFlow & Pressure GWの有用性を訴えるライブデモンストレーションとも共通する所があります。

(6) TRIマニアック・カンファレンスの概念を取り入れる
 1998.9.28-29に湘南国際村センターでTRIマニアック・カンファレンスを開催しました。これはTRIに興味を持つマニアが泊り込みでTRIについての初歩から高度な問題まで討議するとともに、ライブデモンストレーションを題材としてお互いに学びました。この会はその後も諸外国で非常に好評で、再開を強く望まれています。泊り込みというのは困難ですが、場合によっては夜も膝を交えた討議を行っても良いかもしれません。その場合会場が問題となりますが。

(7) 現在電子メール上で行っているこのような議論を現在製作中のホームページ上で公開すると共に、協賛をお願いしているメーカーにも通知する
 我々が現在行っている議論は決して実行委員会メンバーに限定した問題では無い筈です。もしもこれらの議論を我々の内部にのみ限定してしまえば、それは「仏つくって魂いれず」ということではないでしょうか? 皆に同じような問題を少しでも共有していただく事で新たな地平が開けるような気がします。

(8) マンネリをどのように打破するか
 そもそもマンネリと思い始めれば、それがマンネリの始まりである。我々は未だマンネリに陥っていない。何れにしろマンネリを打破するためには、「何か変わった」というものを具体的に見せる必要がある。その意味でもプログラムというか企画が重要である。思い起こせばこれまでの鎌倉ライブデモンストレーションには正直の所、企画というものが存在しなかった。今回は皆様方のお知恵をたくさん集約して良い企画の下に運営できれば、と思います。



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